BF-TM8250の連続送信防止装置の試作 JE6JVD
多くの方がBF-TM8250とVoIP研究会で頒布されているID装置の組み合わせでDMRデジピータを運用しておられると思います。
今回、BF-TM8250が、一定時間連続送信した場合に電源を入れ直す装置を試作してみました。
対象となるのは、BF-TM8250の背面20pinからBusy信号が取り出しているID装置を使われている場合です。
この装置を考えるきっかけとなったのは、DMRデジピータの2段リンクの実験をする際に、デジピータ間でループが
発生し連続送信状態になることを何とか回避できないかと思ったことでした。
私は専門的なことはよくわかりませんが、極めて短時間に送受信を繰り返しながら中継動作をするDMRデジピータの場合、
デジピータ間の信号がアクセス局より強い場合、デジピータどうしが無限に中継しあうことでループが発生するものと
理解しています。
万一、そうなってしまったときは、どちらかが無線機の電源を一旦切り、ループ状態を切るしか解決策がないと考えますが、
24時間見張っている訳にもいかないので、この「電源入れ直し」の作業を自動化できないものかと考えてみました。
連続送信防止といえば、モービルマイクの無変調防止装置が真っ先に頭に浮かびました。
これで一定時間連続送信したことを検知できれば、それをトリガーにして無線機の電源を入れ直すことはできそうです。
最初はJR6PUE局のホームページに掲載されているタイマーICを使った無変調防止回路をベースに自作しようとして、
自分なりにかなり試行錯誤しましたが、素人レベルの知識ではうまくいきませんでした。
それでも何かよい方法はないものかと考えた結果、タイマーモジュールと光モジュールの組み合わせに、わずかな数の部品の
追加をすることで目的の動作をさせることができました。
実際に2段リンクでのループが発生した際の挙動は確認できていませんが、理論上は大丈夫と思っています。
興味がある方はぜひ試していただき、改善点などアドバイスいただければ幸いです。
作成に必要なもの
1
タイマーモジュール
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9W2XWF3?ref=ppx_yo2ov_dt_b_fed_asin_title
2
光センサーモジュール
https://www.amazon.co.jp/dp/B0978YJ9WF?ref=ppx_yo2ov_dt_b_fed_asin_title
3
ゴム底脚
https://amzn.asia/d/ceVQaoT
近くのホームセンターでたまたま見つけたので使いましたが、これにこだわる必要はありません。
4
ケース
試作品なので、100均(セリア)で購入
5
パーツ類
ヒューズ入り電源ケーブル … 1
結線用ケーブル … 少々
電解コンデンサ 220μF … 1
整流用ダイオード 1N4007 … 1
バナナジャック 4mm … 赤・黒 各1
製作方法
1
タイマーモジュールの設定
このタイマーモジュールは7つの動作モードを持ち、0.1秒から999分までの時間設定ができます。
今回は、7つのモードのうち、「P-2」モードを使い、「連続送信可能時間」と「電源断から復旧までの時間」の
2つを設定します。
なお、このモジュールを使用するにあたって、私は下記の動画を参考にしました。私の説明よりよほど解りやすいので、
事前に見られることをお勧めします。
※倹約DIYさんのYouTubeチャンネル
https://youtu.be/77RIe2wrd3I
(P-2モードの設定は10分54秒から)
(1) 「〜30V」端子とGNDに5V以上の電源をつなぎます。
(2) モジュールの電源が入ったらSETを長押しします。
(3) 7セグの表示が「P-2」以外ならUP、DOWNを押して「P-2」にします。
(4) 再度SETを押すと「OP」表示になります。「OP」は、この装置では「電源断から復旧までの時間」になります。
(5) 少し待つと「00.0」に変わります。この状態は0.0秒を意味しています。
もしかしたら、デフォルトでは違う時間が出るかもしれません。
(6) この装置では、0.1秒単位の動作は不要です。STOPを押すと「000.」のようにドットが一番右に移動すると思います。
この状態で秒単位になりますので、これで設定していきます。
(7) 「電源断から復旧までの時間」は、とりあえず5秒で設定します。UP、DOWNを押して表示を「005.」に
してください。あまり短すぎると無線機に良くないと思いますので、最低でも5秒は必要と思います。
(8) 再度SETを押すと「CL」表示になります。「CL」は、この装置では「連続送信可能時間」になります。
ここで設定した時間を過ぎたら無線機の電源が切れます。
先ほどと同じ要領でセットします。テスト用として30秒、表示「030.」に設定してください。
実際の運用では、あまりにも短く設定すると話している途中で切れてしまいますので5分程度が妥当ではないかと
思います。あとで、好みの長さに変更してください。
(9) SETを長押しすると、「P-2」の点滅後、「000.」になり設定完了です。
(10) 電源を外します。
2
BF-TM8250の設定
この装置では、BF-TM8250のボリュームの下のLEDが点灯していることを光センサーで拾って送信中であることを判
断しています。従って、送信時以外にはLEDが点灯しないようにCPSで設定変更します。
3
各モジュールの接続
下の図と写真を参考に結線してください。コンデンサとダイオードは空中配線しますのでショートに注意してください。
あらかじめタイマーモジュールの裏にケーブル数本をハンダ付けしましたが、表の端子に全てつないでも問題ありません。
結線が終わったら、このようにケースに収めました。赤丸の中の黒い部分は、ダイオードです。光モジュールのリレーは
真ん中とマジックで印を付けている画面下の端子を使います。各モジュールはホットボンドで固定しましたが、
ねじ止めの方が確実と思います。
LEDは必須ではないので接続図には入れていませんが、4.7Kの抵抗を入れてタイマーモジュールの電源ラインに
接続しています。
無線機の電源ケーブルを接続します。
電源ラインには安全のためヒューズを入れます。20W機は送信時7Aとなっているので10Aを入れています。
CDSセルは、ゴム脚底に入れてホットボンドで固定します。
◎完成した状態
モジュールの青いLEDが怪しく光っています。
ゴム脚底に入れたCDSセルは、無線機のボリュームの下に両面テープで貼り付けましたが、ゴム脚の真ん中の穴を両面テープで
塞がないように注意してください。
はがれやすいので養生テープで補強しています。取付方法は少し工夫した方がよさそうです。
動作テスト
1 そもそもは、2段リンク時のループを切るのが目的ですが、まずはアクセス局に見立てた手持ちのハンディ機で動作の
確認をします。
2 BF-TM8250の電源を入れ、SFRモードONにしてください。
3 チャンネルを合わせてテスト開始です。
(1) ハンディ機で送信すると、BF-TM8250はSFR動作を開始し送信になります。
(2) 同時にこの装置のタイマーモジュールが起動しカウントを開始します。
(3) 30秒以内にハンディ機が受信に戻るとSFR動作が終わり同時にタイマーモジュールの電源が切れ、何も起きません。
(4) 再度、ハンディ機で送信すると、(1)の動作に戻ります。
(5) ハンディ機を連続送信してBF-TM8250の送信状態が30秒を超えたら、タイマーモジュールのリレーが作動し、
BF-TM8250の電源を切ります。
(6) 電源断から5秒が経過したら、再びBF-TM8250の電源が入ります。
(7) この時にタイマーモジュールは電源が切れます。
(8) BF-TM8250は受信状態のはずなので(1)に戻ります。
※動作が確認でき、実際の運用で使用する際は、タイマーのCL時間を5分程度に変更してください。
参考・動作解説
・連続送信可能時間(CL) … 300秒
・電源再投入までの時間(OP) … 5秒
とします。
(1) BF-TM8250が送信を開始して光モジュールのリレーがONになると、+13.8Vの電源からタイマーモジュールのCOMから
NCを経由してリレーを通り〜30V端子に電圧がか
かり、モジュールの電源が入ります。同時にTrigger端子にも電圧がかかるので、初期化後、タイマーがカウントを開始
します。
(2) 300秒以内にリレーがOFFになる(受信に戻る)と(1)の回路が遮断され、モジュールの電源が切れるため、結果として
タイマーもリセットされます。
(3) 再度、送信開始すると(1)の動作をします。
(4) 送信のまま300秒が経過するとタイマーモジュールのリレーがONになります。すると、COMとNC間は遮断され、
無線機の電源が切れます。
同時にタイマーモジュールの〜30V端子への電源も断たれますが、このままではモジュールが停止してしまい不都合です。
それを防止するためにリレーが切り替わった後はNOから〜30V端子へモジュールに電源を供給しますが、リレーが
切り替わる瞬間にも切れるので、その一瞬の電源を保持するため、220μFのコンデンサを入れています。
また、リレー作動後は、NOからリレーを通って無線機に電源が行かないように整流用ダイオードを入れています。
(5) 5秒後、タイマーリレーモジュールのリレーが再度OFFになり、無線機の電源が入ります。また、同時にNOから〜30V
端子への電源が切れます。
(6) このとき、無線機は受信状態のはずですから、光センサーモジュールのリレーはOFFになっています。
(7) その結果、NCからもNOからも〜30V端子への電源が断たれているのでタイマーモジュール自体の電源がOFFになります。
(8) 次に送信状態になったら(1)の動作に戻ります。
※ 光モジュールは、正確には「暗ければリレーON、明るければOFF」の動作をします。
従って、受信状態ならリレーONになり、明るければリレーOFFになります。
しかし、これでは話がややこしくなるので、この説明の中では、「送信状態になると光モジュールのリレーがONになる」
という表記をしています。
おわりに
BF-TM8250の背面20pinコネクタからBusy信号が出ていない場合、VoIP研究会が頒布されているID装置は、
今回のこの装置と同様に前面LEDからBusy信号をピックアップしています(というか私がマネしただけですので)が、
今回のこの装置は残念ながら使えません。しかし、別の手を考えてありますので、そのうちまた実験してみたいと思います。
この1ヶ月ほど、とても良い頭の体操になりました。何だかんだとAmazonでパーツ類を買いまくって、時間ができると
自室にこもってハンダごてを握っていました。家庭内SWRが悪化中ですので、しばらくおとなしくします(笑)
文責:JE6JVD (2025.10.26)